東京大学 生産技術研究所の今井 公太郎 教授は、3Dプリンター(Additive Manufactured:AM)で製造されたアルミニウム合金のジョイントを使用し、軽量で組み立てが簡単な「自作できる建築」のプロトタイプを開発しました。
住宅ローンから解放されたノマディックなライフスタイルも人生の選択肢の一つに?
今井研究室の研究チームは、建設重機を用いずに自分たちで組み立てられる住宅のプロトタイプを開発しました。家の耐久性とテントの機動性をバランスさせたこの建築は、自由に分解・組み立てができます。構造に等長の60㎜径のアルミフレームを採用することで建築の重量が軽量化され、3Dプリンタで製作したアルミ合金のジョイントを採用することで、施工が簡単になるため、4人で二日ほどの手作業で組み立てることが可能になります。
簡単に組み立てができる軽量な建築フレームは、災害復興住宅や発展途上国の病院、グランピングなど多くの需要があります。解決策としてはプレハブのユニットによる方式が一般的ですが、単位空間が画一的な大きさになり、計画のフレキシビリティを確保することが難しいという課題がありました。歴史的にはこうした軽量のスペースフレームはアメリカの発明家(建築家)、バックミンスター・フラーが考案したジオデシック・ドームが著名ですが、球状の空間しか作ることはできませんでした。
研究チームが開発した方法は、ジオデシック・ドームと同様に、構造的に有利な三角形で構成された四面体(Tetra-hedron)を基本としながら、底面が四角形で変形が可能な四角錘(Penta-hedron)を適度にこれと混ぜることによってできる混成スペースフレームを採用したことです。3Dプリンタにより、ジョイントに集まる部材の角度をその都度自由にすることで、球形以外の形態の選択が可能なスペースフレームを実現しました。
ジョイントの組を差し替えることによって、建築全体の形態を変形することができるので、規模を変更したり、用途や敷地の形状の変化に合わせて形を変えたりすることができます。そして、どのような外形のスペースフレームになったとしても、外壁は同サイズで標準化された正三角形の透明、不透明、断熱のいずれのパネルを用いることができます。パネルとアルミパイプはガスケットゴムというジョイント材によってどのような形で取り付いても圧着され、雨風を通さない屋根や壁を形成することができます。
今は、いわゆる屋根(あずまや)で半屋外空間ですが、将来の研究では、完全な内部空間を作ることができるように改良し、環境性能も向上させたプロトタイプを完成させることを目指しています。そして、ベンチャー企業を設立してパーツを販売し、伝統的な住居の制約から解放されたフレキシブルなノマド・ライフスタイルのビジョンをサポートすることを目指しています。
メイン写真: 自分で組み立てられる住宅のプロトタイプ PENTA
撮影:山中 俊治
記事執筆:今井 公太郎 教授
この記事は、東京大学 生産技術研究所の活動を読み物として紹介する英文広報誌「UTokyo-IIS Bulletin」に掲載されたものです。
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災害が起きるたびに、住む家を失った人たちを一刻も早くどうにかしてあげることはできないかと、心を痛めています。 このプロジェクトでは、建築においてネックになりがちな場所と時間という大きなものを乗り超えられと知り、心強く思いました。 自分のこととしても、周りの人々のこととしても、明るい希望が見えました。
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