散らかり具合が示す時の流れ


 東京大学駒場リサーチキャンパス公開および東京大学柏キャンパス一般公開の来場者から寄せられた、研究者への「問い」と、研究者からの「コメント」を紹介します。


時間を戻せる機械を作れますか?

なぜ時間は過去から未来へ一方向にしか進まないのか?
実は、この素朴な疑問に、現在の物理学は答えられません。
「過去から未来に時間が経過しないといけない」という法則はないからです。
時間は単なるパラメーター(変数)の1つに過ぎないのです。

では問いを変えてみましょう。
なぜ私たちは、過去から未来に時間が経過していると感じるのか?
例えば、部屋が片付いていく動画を見た時、私たちはそれが逆再生されていると感じます。
ほうっておけば部屋は散らかっていく、物理で言うところ「エントロピー増大の法則」を前提としているからです。
「散らかっていく向き」が「時間が進んでいく向き」の目印になっているのです。

私の推測ですが、脳も「脳内のエントロピーが増えていく向き」を目印に、時間の経過を認識しているかもしれません。
もし人間が、神経細胞の活動で熱が発生するなど、脳内のエントロピーを増やしながら物事を記憶しているのだとすると、反対にエントロピーを減らしながら記憶を増やしている生物がいたら、その生物と人間は、時間のとらえ方が逆になるはずです。人間から見たら、彼らは時間を遡っているように見えるでしょうが、彼ら自身から見たら順当に時が進んでおり、結局のところ「自分の時間を戻す」体験を生み出すことは難しそうです。

羽田野 直道 教授 生産技術研究所

記事執筆:羽田野 直道 教授

 毎年6月初旬には「東京大学駒場リサーチキャンパス公開」が、10月下旬には「東京大学柏キャンパス一般公開」が実施されています。東京大学 生産技術研究所 広報室では、研究者たちが思い描く「もしかする未来」と、来場者が研究者にかなえてほしいと願う「もしかする未来」が交錯するオブジェを、展示してきました。この記事では、来場者から寄せられた願いに対しての、研究者からのコメントを紹介しています。
東京大学駒場リサーチキャンパス公開ウェブサイト
東京大学柏キャンパス一般公開ウェブサイト

みんなのコメント

コメントはまだありません。

投票&コメントで参加

この記事が描く「もしかする未来」をどのように感じましたか?あなたの期待度を投票してください!

投票いただきありがとうございます!この研究についての、あなたの意見をお聞かせください。いただいたコメントは、承認されると「みんなのコメント」に掲載されます。コメントが盛り上がれば、研究者本人が登場することも・・・?!

コメントを残す

もっと詳しい研究内容を知りたい方、疑問や質問がある方は、研究室のウェブサイトをご覧ください。

前の記事 次の記事