東京大学 生産技術研究所で進められている研究の奥深さを、1つの動詞を切り口に紹介します。
つける
温泉に浸かると肌のきめが整う気がしますが、亜鉛の場合は正反対。湯に浸けると、厚さ数百ナノメートルの剣山のような酸化膜が生じます。
梶原 優介 教授はこの美しい写真を眺めるうちに、表面を覆う亜鉛を介して、鋼とプラスチックを付ける新手法をひらめきました。亜鉛めっき鋼を75℃の熱水に数十分浸けて酸化膜を作り、溶けたプラスチックを流し込みます。接着面積が大きいため、異素材ががっちりくっつきます。シンプルで工場に導入しやすい上、化学薬品やレーザーを使って金属表面に微細構造をつくる既存の方法が抱えていた、使用済みの薬品による環境負荷やめっきの破損などの課題を、一挙に解決したのです。一見関係なさそうな無機化学と加工学を結びつけた着眼点こそ、新手法開発のカギ。「浸けて、付ける」技術が身近に使われる日もすぐそこです。
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梶原 優介 教授
記事執筆:松山 桃世 准教授
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