東京大学駒場リサーチキャンパス公開および東京大学柏キャンパス一般公開の来場者から寄せられた、研究者への願いと、研究者からのコメントを紹介します。


脳内タンパク質の異常が引き起こす難病を治す薬を作って下さい!

工藤 一秋 研究室ではこれまでに、ある種のペプチドには化学反応を触媒する作用があることを見出してきました。
ペプチドとは、アミノ酸がいくつかつながってできた分子を指します。アミノ酸がつながった分子と言えば、皆さんすぐに思いつくのはタンパク質でしょう。酵素はタンパク質の一種で、触媒作用をもち、それによって私たちの生命活動を支えています。ペプチド触媒は酵素に倣ったもので、アミノ酸をひとつずつ化学反応でつなげて作られます。酵素は生命活動に関係した反応しか触媒しませんが、ペプチド触媒ならばその枠を超えていろいろな反応に適用できます。

脳内タンパク質の異常が引き起こす難病のひとつに、アルツハイマー型認知症があります。これにはアミノ酸42個からなるアミロイドβタンパク質(Aβ42)が関わっており、このAβ42が脳内で集まって線維状の構造体になることが病気の原因とされています。一方で、Aβ42よりもアミノ酸2つ分だけ短いAβ40にはそれほどの毒性はありません。
我々の体内にはAβ42をAβ40に変える酵素ACEがあるので、「ACEを活性化する物質を薬にしては?」という気がしますが、実はこの酵素、血圧を上げる作用もあるため、アルツハイマー病と高血圧を天秤にかけるような悩ましいことになってしまいます。
もしもAβ42をAβ40に変えるだけの作用をもつペプチド触媒が開発できれば、それがアルツハイマー病の薬となる可能性があります。

記事執筆:工藤 一秋 教授

毎年6月初旬には「東京大学駒場リサーチキャンパス公開」が、10月下旬には「東京大学柏キャンパス一般公開」が実施されています。東京大学 生産技術研究所 広報室では、研究者たちが思い描く「もしかする未来」と、来場者が研究者にかなえてほしいと願う「もしかする未来」が交錯するオブジェを、キャンパス公開で展示してきました。この記事では、来場者から寄せられた願いに対しての、研究者からのコメントを紹介しています。

本研究室は、東京大学駒場リサーチキャンパス公開2025「生研ピックアップ企画」に選ばれました。

東京大学駒場リサーチキャンパス公開ウェブサイト
東京大学柏キャンパス一般公開ウェブサイト

みんなのコメント

メタロプロテアーゼを模倣した,どちらかというと金属錯体が主体の触媒はすでに世に出ていますが,ペプチド触媒でやるメリットや勝算は? https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2009/cs/b710345j#cit54 その中でもAβ42を切る触媒もすでにあります。これを生体応用できるよう改良した方が早いように見えるのですが。 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.200702399

その未来に条件つきで期待

2歳は若返りたい英米太(42)

「もしもAβ42をAβ40に変えるだけの作用をもつペプチド触媒が開発できれば」,こここそが一番難しいところだとお察しします。また,Aβ42の凝集体がアルツハイマー病の原因だというのがひとつの有力な仮説ですが,凝集前後のAβ42を40に分解することが「治療」につながるのか?「予防」止まりにならないのか疑問です。過剰なリン酸化を受けたタウタンパクこそが神経変性疾患を直接招くのであって,Aβ42の凝集体形成はその前段階だという説がありますが,タウタンパクは放置でいいの?とは思います。

その未来に条件つきで期待

通りすがりのあるケミスト

脳内タンパク質の研究が進み、病気治療だけでなく、幅広く私達の生活を豊かにしていくと思います!

その未来に期待

あやこ

レカネバブやドナネバブが従来の薬剤とは異なり直接Aβへ効くと言っても、Aβの生成には効かないのに対してこの研究はAβ生成への直接のアプローチなのでとても期待しています。ただ、クリキャスがはらむと言われるようなリスクがあるならそこをどうクリアしていくかも大切なのではないのでしょうか? 素人なのでゲノムと酵素の違いによる影響については分かりませんが。

その未来に条件つきで期待

AD当事者65

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