水問題を解決する新しい産業を

WOTA株式会社 代表取締役 兼 CEO 前田 瑶介


東京大学 生産技術研究所の卒業生が、卒業後のキャリアパスや近況、東大生研 在籍時における経験と現職のつながりなどを紹介します。


 WOTAは、世界の水問題の根本解決を目指しています。水問題は上下水道だけでは解決し得ず、他に解決手段が必要です。一方で、水問題を解決したい人は世界中にたくさんいるので、一定の条件を満たせば使える「標準」化された解決手段さえあれば、誰でもどこでも解決することができます。そのため、WOTAでは、上下水道を補完・代替する水インフラの新標準として、生活排水と雨水を回収しその場で安全な水に再生利用できる「小規模分散型水循環システム」の研究開発と社会実装に取り組んできました。2014年の創業以来、災害対応を契機に全国の自治体に導入され始めており、2021年の英国王室からの表彰を契機に海外での事業開発を開始し、世界中から水問題に関心のある技術者や研究者、企業が集まるようになってきました。WOTAが目指すのは、言語や業界など既存の枠組みを超えて、水問題解決という共通の目的に対して誰もが参加できるようになる未来です。別の言い方では、水問題解決産業を作る取り組みです。

2024年能登半島地震の際の支援活動の様子。持ち運び可能で水道に接続せず設営できるシャワーを設置した。 提供:前田 瑶介 氏

 東大生研では、社会課題の解決や、新しい産業を作る上で極めて重要な視点を学びました。それは、産業の全体構造を俯瞰し、目的から技術選定するという視点です。技術は手段であるため、分野にとらわれず、広くフラットに技術を選択する必要があります。単純なことですが、これがなかなか難しく、産業が発展するほど分業が進み、産業の全体構造が把握しづらくなります。その結果、部分的改善に終始したり、既存技術を選定せざるを得ない制約が発生したりするのです。東大生研は、様々な産業領域で、分野を横断し、社会実装を目指した実学的な研究が数多く行われており、産業を相対化し俯瞰的かつ公平な視点を得ることができる、世界的にも稀有な研究機関だと思います。

メイン写真:英国王室からの表彰を受けウイリアム王子と
提供:前田 瑶介 氏

記事執筆:前田 瑶介
WOTA株式会社 代表取締役 兼 CEO
東大生研 人間・社会系部門 野城 智也 研究室 出身

東京大学 生産技術研究所の特徴のひとつとして、さまざまな専攻に所属する研究室が多彩な研究活動を行っており、また海外からの留学生等も多く国際色が豊かであることが挙げられます。
この記事は、大学院の進学先を探す理工学系の学生さんや、これから東大生研での活動を始める学生さんに、東大生研での活動・生活やキャリアパスを紹介する冊子「キャンパスライフ特集号」に掲載されたものです。
≫ 生研出版物

みんなのコメント

素晴らしい活動に胸が熱くなりました。応援しています! 世界中のどこでも、安全な水が豊富に得られる未来を期待しています。

その未来に期待

ぽこ

今後来るであろう大災害を前に、このシステムが広く浸透すれば安心ですね。価格や耐久性など、もっと知りたいと思いました。企業としての利益を追求するだけでなく、水問題解決産業、つまり新しい産業を作り出そうとする姿勢がすばらしいと思いました。これからも応援しています。

その未来に期待

neko

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